馬になりたがる私

おれを馬と言ってくれ、いや、あなたの馬になりたい。って、どっちもちげえええええ。

牛になる事はどうしても必要です。
吾々はとかく馬になりたがるが、牛には中々なりきれないです。

僕のような老猾(ろうかつ)なものでも、
只今(ただいま)牛と馬とつがって孕める事ある相の子位な程度のものです。
 
あせっては不可(いけ)ません。
頭を悪くしては不可(いけ)ません。
根気づくでお出でなさい。
世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、
火花の前には一瞬の記憶しか与えて呉れません。
うんうん死ぬ迄押すのです。
それ丈(だけ)です。
決して相手を拵(こし)らへてそれを押しちゃ不可ません。
相手はいくらでも後から後からと出てきます。
そうして我々を悩ませます。
牛は超然として押して行くのです。
何を押すかと聞くなら申します。
人間を押すのです。
文士を押すのではありません。

牛になる事はどうしても必要です/漱石が若き天才に贈った言葉 読書猿Classic: between / beyond readers


世の中、成果主義で、結果が全てと世知辛いこの頃でございます。
そりゃ私とて、勝って全て手に入れたい、何者かになりたい、自分の中の枠を飛び越えたい*1と、こい願い望んでおります。とはいえ、そう簡単には上手くいかなくて、斜に構えようと、せっかく責任のない自由なのだから、好き勝手に生きよう、ボヘミアンな生活を謳歌しようと思いたつも、その自分自身の願いや望みが真っ先に跳ね返ってくるのです。そして、そんな願いや望みと、世間の目や浮き世のしがらみ*2が、焦りが仲人になって、悪魔合体をしはじめ、不死身のチェンソー*3が生まれるのです。そのチェンソー男が、どこへ逃げようとも、どこまでも私を追いつめる。
だけど、今のままじゃ勝てなくて、どうしようもなく地団駄。それでも、腐っちゃならないのはわかっているけど、なかなかしたたかな心を持てなくて不貞寝。何が、ねだるな勝ち取れ。さすれば、与えられん*4。だ、こんにゃろう、とだめのだめだめだけれども、耐えがたき耐え、忍びがたきを忍ぶ、私は牛になりたい。
でも、食用だったらミンチだし、口蹄疫になったら殺処分されてしまうで。
やっぱり、そう考えると、馬並みのほうが……。チャンチャン